【5分で分かる】『プロ倫(プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神)』ウェーバー

今回はドイツの社会学者マックス・ウェーバーの理論を参考に資本主義の発展との関連性をご紹介します。

マックス・ウェーバーは19世紀から20世紀にかけてその鋭い観察眼で理論を展開し活躍した社会学者です。今回扱うテーマも例にもれず彼の興味深い分析を見ることができます。

彼の代表作である「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(通称:プロ倫)」でウェーバーは資本主義を発展させたのはプロテスタントの宗教活動であると考えました。

なぜ経済とは全然関係なさそうなプロテスタントの宗教活動が資本主義の発展に関係しているなどという主張をしたのでしょうか?

その詳しい中身について今から学んでいきましょう。

プロテスタントとは?

まずはプロテスタントとはどういう人たちか、彼らの宗教活動とはどういうものなのかについて見てみましょう。

プロテスタントとは簡単に言えば既存のカトリックに対する分裂した派閥です。キリスト教という同じ教義のもとにありながらカトリックとはその教義を達成するアプローチや何を第一優先にするかが違う派閥だというぐらいの感じでおさえておいてください。

次におさえておいてほしいのは「予定説」です。主にプロテスタントの中でもカルヴァン派と呼ばれる派閥の人たちがこの考え方のもとにありました。

予定説の内容をざっくりいうと、「その人個人が神に救われるか否かは生まれた段階で既に決まっている!」というものでした。ほかの派閥のように教会にどれだけお金を寄進したか、もしくはどれだけ篤く信仰したかなどは関係なく、あくまで初めから神によって決められているというのですから現代の人が聞けばもはや絶望しそうですよね。

これには当時のプロテスタントたちもたまったもんじゃなかったでしょう。自分が果たして救われる側なのか、それとも救われない側なのか日々生活しているだけではわからないのですからさぞ不安だったと思います。

ではどうやって自分が救われる側なのか救われない側なのか判断していたのか?

そこで導入されたのが「天職」、それから「禁欲」という考え方です。

そしてウェーバーはこのふたつに目をつけました。

天職から見ていきましょう。

「天職」

これはつまり「労働は神から救われる人が与えられる使命」だという認識のことです。職業労働に勤しんでいる人は「救われる側」、勤しんでいない人は「救われない側」だという認識が広まったということになります。これによりプロテスタントの人たちは宗教活動と称してせっせと労働に勤しむようになりました。

「禁欲」

では禁欲のほうはどうでしょうか。これは単純に「労働によって生まれた利益を神の使命を全うするため(ひいては救われることを確信するため)に使いなさい」という教えです。これによりプロテスタントの信徒は労働によって生み出した財を私利私欲のままに使うのではなくさらに労働がしやすくなるように、現代のことばでいえば「設備投資」をする方向に使うようになりました。

ウェーバーの分析

さて、ここまでみてきたところでウェーバーが資本主義とプロテスタントの倫理観のつながりについてどういった分析をしたのか、みていきましょう。

ウェーバーはこのプロテスタント、とくにカルヴァン派プロテスタントの天職」、それから「禁欲」の考え方がまさしく資本主義が発展するための土台となったという分析をしたわけです。

プロテスタントたちが労働する理由はあくまで予定説のもとで神の使命を全うし救われるかどうかを知るためではありました。しかし、やっていることはせっせと労働し、その労働によって成した財をさらなる事業拡大のために投資しさらに大きな資本を得るというまさしく資本主義のテンプレートをやっていたわけです。

プロテスタントの宗教活動をしていた当時の信徒は自分たちが資本主義の一端を担っている!なんていう自覚は一切ないわけですからあとからそれを分析して見抜いたウェーバーの功績の大きさがうかがい知れます。

ちなみに資本主義の発展に大きな役割を果たしたのは⑴天職の概念と⑵合理的な禁欲ですから、このふたつがそろっているカルヴァン派のプロテスタントこそが資本主義の発展に特に貢献していました。そもそもカトリックでは財の蓄積自体を批判的にみるので条件として不十分。ルター派などの他のプロテスタントにも労働を善とする考え方はあったものの予定説の考え方がないのでカルヴァン派ほどに労働して財を成すという考え方が発展しませんでした。

以上が社会学者マックス・ウェーバーの社会分析になります。いかがだったでしょうか。

おまけ

余談ですが、ウェーバーの分析を裏付けるかのように現代社会において経済的に成功している国は宗派がプロテスタントである国が多いです。アメリカやイギリス、ドイツなどがそうです。逆にそこまで経済的に成功していない国はプロテスタント以外(カトリックや正教会など)であるケースが多いです。財政赤字に悩まされたギリシャなども正教会です。

こうしてみるとなかなかに面白い考察ですね。

宗教と経済という一見関連のなさそうな分析から関連性を見出したウェーバーはものごとを多角的に、いろんな事項を組み合わせて観察してみることの重要性を教えてくれますね。

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